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あれから1週間後の8月10日、豪一は、兵舎で陸上自衛隊の夏期制服に身を包み帰省の準備をしていた。荷物を持ち廊下に出ると駐車場へ向かう。
その途中、桃園二等陸士が豪一の姿を認め、走ってくる。
「轟先輩ーっ!!、ばっちり決まってますね!!、彼女を実家に連れて行くんですよね!!」
桃園二等陸士の言葉に顔色を変えた豪一は、彼女に問いただす。
「おい、勘違いしてるぞ!!、アイツとは、そういう関係じゃあねぇぞ!!」
「えーっ、違うんですか!?、エリカさんでしたっけ、アノ人、スッゴい美人じゃないですか、先輩、結構親密だったですよね?」
桃園二等陸士の興味津々なキラキラお目目が鬱陶しい位執拗に絡んでくるのを間近に感じながらも豪一は、そんな後輩に真顔になり低い声で言い放つ。
「誰が噂を流しているかは、しらねぇが、他人の尻馬に簡単に乗っかるのは、感心しねぇな」
桃園二等陸士を見下ろす様に鋭い視線を送る豪一に彼女は背筋を凍らせる。豪一が軽率な言動を嫌う事を忘れていたのだ。
「す、すみません先輩……」
「分かりゃいいんだ、まぁ、かわいい後輩をいたぶっても、面白くねぇしな」
豪一は、桃園二等陸士の頭髪をぐしゃぐしゃにかき回して笑顔を見せる。
「やだぁ、痛いですよ、轟先輩ーっ!!」
「しっかり、ウチのヤツを見ててくれ、土産は買ってきてやるからな!」
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