=勝沼= 世界の片隅で…

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手を振るさくらを背にして、豪一とエリカは車中の人となった。これから、少なくとも半日は2人っきりの状態が続くのだ。豪一は鼻歌混じりでハンドルを握り快調に車を走らせていく。 「少尉殿、もう少し肩から力を抜いたらどうだ?」 豪一は、チラリと助手席のエリカに視線を走らせ、彼女の様子を伺っていた。車に乗ってから、身動ぎ一つしないエリカが気になって仕方がない。 「……」 「おい、少尉殿!!」 余りに沈黙が続くのを耐えかねた豪一がエリカの方へ顔を向けた。 「ん!?、少尉殿……」 エリカは寝息をたてていた。その端正な顔に、欲得のないあどけなさを浮かべる表情はまるで菩薩の様だ。
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