18人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
エリカは実に食欲旺盛だった。券売機で片っ端からボタンを押しまくり大量に発券してカウンターに向かったのだった。豪一が料理をテーブルに置くと同時にエリカは器を掴み箸を突っ込んで猛烈な勢いで食べ始めた。
その凄まじい健淡家ぶりに豪一は黙って眺めているしかなかった。エリカは小気味良くラーメンを啜り、チャーハンを掻き込み、餃子をかじる。更にきつねうどん、肉そばと食べ進めていく。やがて彼女は、自分を見つめる視線に気付いた。
「どうしたの?、轟二曹も食べなさいよ……」
「おっ、おう、頂くとするか……」
豪一はエリカに促され、親子丼の器を掴み、箸で口に掻き込み始めた。やはり彼も豪快に料理を片っ端から平らげていく。
お互いに競い合うように、料理を食べ進める2人の行為は食欲を満たす為に行われていたが、別の面で見ればセックスと同じレベルの欲望を満たす行為だった。
豪一は、これから、その行為を彼女に対して実施する許可をナターシャから得てはいたものの、エリカ自身は何も知らず彼の誘いに乗ってきたのだが、田舎が近づいてくるにつれ、胃が痛くなりそうなプレッシャーを感じ始めていた。
そんな思いで食べる、料理は何を口に入れても、砂を噛みしめているような感覚しかしない。
「少尉殿、その調子だと、身体の方は順調に回復してるな」
「まぁ、少なくとも三大欲求のウチ、睡眠と食欲は満たされたわね」
「最後は性欲が残ってるがどうする少尉殿」
豪一は、ふざけた調子でなく、真面目な顔つきでエリカを正面から見据えていた。そんな迫力のある豪一の表情に圧倒された彼女はポツリとこぼす。
「それだけは、勘弁して欲しいわね……」
最初のコメントを投稿しよう!