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その表情を見て、豪一は藪蛇だったか、と心中、苦渋するが、エリカは箸を動かしながら、豪一の顔を見返し、ニカっと笑顔になると一息置いて口を開いた。
「気にしなくて、いいわよ、ナターシャから何を言われた知らないけど、私は大丈夫だから」
「何が大丈夫なんだ?」
「私とヤル気なんでしょ?」
エリカの平然と答える態度に豪一が逆に動揺すると、彼女は顔に意地の悪い笑みを浮かべた。嫌な予感が豪一の胸によぎる。
「なっ、誰に聞きやがった!!」
「ナターシャからよ、彼女に提案したんでしょ、私の慰安を……」
「最初から下心があった訳じゃねぇぞ!!」
「下心が無いって言われてもねぇ…… 」
じっと、上目遣いでエリカは口元を更に薄気味悪い笑いで歪ませ豪一をいたぶる様に見つめる。最早、彼は蛇に睨まれた蛙同然だった。
(大尉殿……、何も本人にバラす事は、ねぇだろ!!)
そんな豪一の心の叫びを見透かした様にエリカは笑みを絶やさず、恐ろしく冷徹な言葉を口にして、彼を突き放したのだった。
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