=勝沼= 世界の片隅で…

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「夏美、まさか、お袋のヤツ、近所に話し込んでないよな……」 「残念だけど、町内中のヒトが豪兄が嫁さん連れて帰ってくる話しになってるけど……」 「ま、マジかぁ……、お袋……、早まってくれたな……」 「まぁ、豪兄、いい加減に決めたらどうなの?、その彼女(ヒト)も、"その気"があるからウチに来てくれるんじゃないの?」 妹の一言に、豪一は思わず吹き出しそうになる。今の少尉殿(エリカ)の頭に結婚などという選択肢はあり得ないからだ。心の奥底に暗い闇を持つ女、それが彼のエリカに対する今の見方だ。 嫌い、嫌いは、好きに転化するというが、それは本当だろう。実際、豪一もエリカと初対面の時は、面白くない女だと思っていたが、彼女の語るバックボーンや士官学校時代の話しをナターシャから聞き、本人の仕事ぶりを見ていて。極めて、生まじめな人物である事は分かってきていた。 しかし、彼女の奥底にある復讐の2文字から発散される形容し難いプレッシャーには、身震いする程の執念を感じていたが、その復讐の為にあらゆる努力を惜しまない彼女の姿に豪一は次第に感化され、惹かれていったのも事実だった。
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