=勝沼= 世界の片隅で…

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豪一のワゴン車の荷台一杯の買い物は、彼の財布の中身が変わった姿だ。ずっしりと重さをました車を一路、豪一の実家に向け走らせる。 真夏の日差しが鋭く車に照り付ける、21世紀も半ばの現在、地球上の気候は温暖化により、人類にとって、更に厳しさを増していた。 人類は、持てる科学力の全てを結集させて、立ち向かってはいたが、自然の力は人間の想定など軽々と超えて、その猛威をふるっていた。 豪一の実家でも、温暖化により、栽培する葡萄の品種を変えねばならなくなり、祖父の代から少しずつ変えていき、昨年全ての品種の変更を終えていた。 クーラーの効いた車内からエリカは青々と葉っぱを繁らせる果樹園を見ながら、豪一に語り掛ける。 「不思議ね、落ち着くのよ、この風景は……」 「そうか……、今年は寒暖の差が激しかったからな、作物の出来は良いみたいだぜ、ウチに行ったら、旨い野菜をたっぷり食わせてやる」
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