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豪一の運転する車は、勝沼の街外れにある集落に到着した。母屋や蔵、納屋などが建ち並ぶ、以外に大きな屋敷と敷地の広さに、エリカは驚きを禁じ得なかった。
「意外だわ……、結構なお屋敷じゃない!?」
「ん、少尉殿、ここら辺では、普通の大きさだぜ?」
車庫の隣にある駐車場に車を止め、豪一とエリカは車外に降り立った。母屋の方から足早に誰かが駆けてくる気配がする。Tシャツにショートパンツのラフな格好で姿を現したのは、豪一の妹、夏美であった。
肩口に切り揃えられた茶髪を振り乱して、彼女はやってきた。足元はサンダルだ。
「豪兄ーぃ!!、おかえり!、そちらのお姉さんがエリカさんね!!、とりあえず中に入ってよ!!」
「夏美、お袋は、まだ帰ってないのか?」
「母さんなら、暫くは帰って来ないわよ、寄り合いだから夕方まで無理ね」
あきれ顔で答える夏美は、豪一のワゴン車から荷物を取りだし母屋に向かって運び始めた。エリカも習って荷物を手に取り一緒に運びだす。豪一も続き、3人は一通り荷物を運び終えて、縁側で一息を付いていた。
冷たい麦茶と甘い水羊羹が渇いたのど越しに心地良く感じられる。
夏美は豪一の耳元で、にんまりと笑いながら囁く。
「豪兄に、しては上出来じゃないの!?、何処で知り合ったの!?」
「だから、同僚だと言ってるだろ!!、お客さんに失礼がないようにしろよ!、夏美」
2人のやり取りを笑いながら眺めていたエリカは、今までになく、リラックスした雰囲気で麦茶を口に含み味を確かめていた。
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