=勝沼= 世界の片隅で…

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「ほらほら、エリカさんも、ああ言ってる事だし、豪兄も状況に甘んじてみたらいいのに?」 夏美の意味深長な眼差しに豪一は居心地の悪さを感じて、思わず声を荒げる。 「いい年の男が、据え膳を出されて、ホイホイと食う様な真似が出来るかぁ!!」 「本当に頑固者なんだから、豪兄は!」 兄をからかう、夏美は本当に楽しそうだ。エリカにも妹がいた……。過去形なのは、ギガントによって奪われたからだ、生きていればちょうど夏美くらいの年頃の筈だった。 あの時、彼女の右手には、妹の左手だけが残されていた。そして、その右手もギガントが原因で今や義手に変わり果てていた。 エリカは無意識に義手と肉体の接合部を左手で探り擦る行為を行っていた。精巧に造られた"ソレ"は見た目の違和感など微塵にも感じさせず、エリカの肉体と完全に融合していた。 「どうした?、少尉殿、浮かない顔をして、何か気になる事でもあるのか?」 豪一の言葉に、エリカはハッと我に帰り、顔を上げて2人に笑顔で応じる。多少のぎこちないさの残った表情を浮かべる彼女に豪一は背負っている"モノ"への重さを感じていた。
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