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「少尉殿、熱でもあるのか?」
豪一は右手のひらをエリカの額に当てて熱を測る。そんな豪一の耳元に口を寄せてエリカは、ドスの効いた声で囁き掛けた。
「これから、私が言う事には全て、イエス回答で答えなさい、これは命令よ……」
この言葉に豪一は、心中穏やかではなくなった。彼女がどういうつもりか、知らないが、有無を言わせぬ上官命令が、この和やかな食卓の場で飛び出そうとは、豪一は夢にも思っていなかったのだが……、彼女の目付きは本物だった。
「うっ、了解した……」
豪一は、戸惑いながらも、エリカの命令に従う事を余儀なくされていた。彼女の強引に物事を進める悪い癖が又顔を出していた。
「お袋ーっ!!、このクソ暑い季節にほうとうってのはねぇぞ!!」
「暑い時期に食べる、ほうとうの美味しさも、エリカさんに味わって欲しいわねぇ」
確かに、豪一の母、響子の作るほうとうは絶品だった。彼も、その味をエリカにも味わってほしかった。
「エリカ殿……、ほうとうを食ってみるか?、えっ……」
豪一の言葉が終わらぬうちに、エリカはほうとうに箸を付け食べ始めていた。父の豪三がその食いっぷりを見て笑う。
「なんとも、豪快に食べる娘さんだな、見ていて気持ちが良くなるぐらいだ!」
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