=勝沼= 世界の片隅で…

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(いやぁーっ!?、親父、視点の位置が違うだろ!?) 豪一は目を剥き出しにした真顔で父親の豪三を見ている。そんな彼の表情に気付いた豪三は、コップに満たされた吟醸酒を一気にあおり、豪一に言った。 「お前は、ガタイはデカイが肝っ玉は小っさい、昔からそうだ、その、お嬢さんは実に大胆な食べっぷりだ、似合いの夫婦になれるんじゃねぇか……」 父親の言い方に少し腹の立つ言い回しがあったものの、さすがに親だけあって、子供の性格は知り尽くしている。実際、豪一は元々臆病者だ、それゆえに細心の注意を払い、限りなくリスクを減らす方法や手段を選択する性質(タチ)だった。そんな彼が今の様に変わったのは、剣道を始めてからだ。 その先輩からある言葉を教えられていた。 『剣道に限らず、物事には万策尽きて窮地に追い込まれる事がある、その時は、積極的行動に打って出ろ、なりふり構わない捨て身の行動にでるのだ!、これが極意だ』 それゆえに、豪一は戦いで追い込まれた時は逆に一歩踏み込んで、死中に活を求めるやり方を選択する事がしばしばあった。
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