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「まぁ、こっちを向けよ、少尉殿」
豪一は、エリカの背後から頬に冷えたサイダーを押しあてる。ヒヤリとした、感触が彼女の火照った肌に心地良く伝わり朧気な意識を常世に引き戻す。やおら、身体を反転させ起き上がったエリカは胡座をかいて座り込む。
「それを、頂戴」
そう言って、エリカは豪一の手からサイダーを奪い取り、キャップを開けると一気に飲みほす。その様子を眺めていた豪一が呟く。
「炭酸を一気飲みかぁ!?、むせるぞ……」
案の定、エリカは盛大にむせて、涙顔に鼻水を垂らして、情けない有り様だ。
「ゲホ、ゲホ、ぎついわぁ」
「だから言っただろ……」
豪一は、苦笑いしながらエリカにタオルを差し出してやると、彼女は彼の手からやはりタオルを奪い取り顔を拭いている。
「まったく、初日から無茶しやがって、誤解を解くどころか更に深みに嵌まっちまったぞ少尉殿」
「轟二曹、あなたのご両親も喜んでいたんだから良かったんじゃない?」
「まあ、それについては、否定しねぇな」
縁側に背中を向け、庭から響く虫の声をバックに豪一は、苦笑いしながらエリカに近づき、目の前で同じように座り込み、胡座をかいた。
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