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お互いに、屏風図を見ながら、それらしい絵柄を探して視線を巡らす。地獄の攻め苦に苛まれる人々の表情は、現世で悪徳の限りを尽くした果てに自らが背負った業罪の為なのだが……。
「轟二曹、貴方は地獄の存在を信じる?」
「信じるも何も、現世、いや現代の状況こそ地獄そのものだぜぇ、現実は」
豪一の口にする現在の状況は人類にとっては、正に地獄と言える状態だった。
「貴方は現実にあると、認めているのね……」
「誰でも苦しんでいるヤツはソノ状況自体が地獄だからな、少尉殿、あんたも、そのクチだろ?」
上手く誤魔化したつもりのエリカであったが、豪一は鋭い刃物で抉る様な言葉で彼女を突きはなしたのだった。
「そんな、ポンコツ女を慰めてはくれないの……」
「よし、よしって、頭でも撫でたら納得するのか?」
屏風ごしのやり取りの後、しばらく沈黙が続く、豪一はゴロリと反転して屏風に背中を向けた、エリカの声がおさまった事で彼は彼女が眠りについたと思っていたのだが……。
「抱いてよ……」
その声に振り返った、豪一の目の前に全裸のエリカが立っていた。薄い間接照明に照らされた肌は滑らかな光沢を見せていた。背後の地獄絵図の中に浮かび上がる女体の曲線美との対比は恐ろしく妖艶な雰囲気を発散させ、豪一の理性を奪い取っていった。
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