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居間では、最後の晩餐の準備が整いつつあった。豪一の弟、浩二(こうじ)が妻を連れてやってきていた。
「おー、兄貴!!、元気そうだな!!、新しい仕事はどうだい!!」
「おぅ、浩二、ぼちぼちやってるぜ、こっちの女性は同僚のビルシュタイン少尉殿だ」
弟の浩二に深々とお辞儀をして挨拶をするエリカに、彼と妻の洋子があわてて、お辞儀を返す。
そんな浩二の耳元で夏美がニヤニヤしながら囁いている。浩二が顔面に驚きの色を浮かべた。
「兄貴ーっ、水臭いなぁー、婚約者って言えばいいだろ!!」
豪一の目の色が変わり、夏美をジト目で見つめる。その視線の痛さに耐えきれず夏美がこぼす。
「既成事実は、あるんだから、今さら同僚って言われてもねぇ……」
その言葉を耳にしたエリカが下を向き顔を真っ赤にしている。そんな様子のエリカを気にした、浩二の妻、洋子が夏美をたしなめる。
「あんたは、昔っから、配慮ってもんが足りないわ!!」
実は、夏美と洋子は幼なじみだ。だから浩二とは幼少の頃から知っている仲であり、2年前に結婚していた。
「兄貴も早く、その人と身を固めろよ」
まだまだ、新婚気分の抜け切らない浩二と洋子の姿を目にしながら豪一はチラリとエリカの方に視線を向ける。彼女も又、彼の方へ視線を送っていた。
(おい、おい、少尉殿、そんな目で、こっちを見るなよ……)
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