=勝沼= 世界の片隅で…

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食事も半ばになり、女性陣は、エリカを中心に盛り上がっている。チビりチビりと焼酎のお湯割をたしなむ豪一の隣りに、父の豪三が一升瓶を抱えて座り込んだ。 「本当に良い娘さんだな、だが、何か抱えてるな……」 「オヤジ、わっ、分かるのか!?」 豪一は、思わず飲み掛けの焼酎を吹き出し、豪三を見ながら更に問いかけた。 「昔から、そういう所は鋭いよな、オヤジは」 「豪一、お前も見えるんだろ"アレ"が……」 豪三の言葉に、豪一は驚いていた。確かに昔から父親は豪一の心中を言い当てる事がしばしばあり、彼はそんな父親が苦手であった。 しかし、それは豪一が持つ能力を父親の豪三も、有していたからに他ならないからだ。豪一は焼酎を一気に煽り、一言、言い切る。 「俺、この仕事が一段落したら、自衛隊を辞めようと思ってる……」 「そうか……、自分で決めたんなら、それでいい」 心なしか、豪三の口調は嬉し気な雰囲気を含んでいた。彼は一升瓶を豪一に差し出しグラスに吟醸酒を注いだ。 「兄貴、じゃあ帰ってくるのか?、助かるよ!!」 「おいおい、まだ帰るとは言ってねぇぜ」 「どのみち、帰ってくるんだろー、にぎやかになるなぁーっ!!」 「それより、浩二、お前も子供はまだなのか?」 「うーん、実はウチの嫁さん3ヶ月だって、今日、医者の診断をもらったんだよ」 照れくさそうに語る、浩二に父親の豪三は更に嬉し気に声を掛けて豪一と一緒に喜んでいる。 「そんな、めでたい事は早く言わんか!!」 「まったく、仲が良いこったぜ!!、祝い金は弾んでやるからな!!」 男性陣も盛り上がり、3人とも、へべれけになり大の字で寝ている。その脇で食卓や台所で後片付けに勤しむ、女性陣は和気あいあいとしながら進んでいく。 4人の中でも特に大柄なエリカは一気に食器や瓶を抱えてテキパキと動く。そんな彼女を3人は驚嘆な面持ちで見つめる。 「あっ……、やり過ぎました……」 「いいのよ、エリカさん、助かったわ、私も最近めっきり動けなくなってね」
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