18人が本棚に入れています
本棚に追加
宴も終わり、離れに戻った、豪一とエリカは縁側で涼んでいた。お盆に切られたスイカが乗せられている。そのスイカをかじりながら、豪一はエリカに語り掛ける。
「少尉殿、いろいろ済まなかった、気を悪くしないでくれ……」
「本当に……、もおーっ、」
豪一の言葉に怒った様子で答えるエリカだったが、少し肩が震えている。豪一はそっとエリカの正面に回り込み様子を伺う。
「ぷぷっ、まったく、本当に小心者なんだから……」
笑顔で豪一の方を向いたエリカは彼と視線を合わせた。彼女は静かに目を閉じる。豪一はエリカの肩を抱き引き寄せると彼女の唇を自らの唇でふさいだ。
エリカの汗ばむ肌が月明かりに照らし出される。顔を打ち振り髪を乱れさせて、豪一との営みに没頭する彼女の姿は胸中の不安を打ち消してしまいたい思いに比例して激しくなっていった。
やがて、2人は互いに身体を震わせて、絶頂に上り詰めていった。豪一もエリカも快楽の渦に飲み込まれ、意識を失っていく。
明け方近くに目覚めた豪一は、隣りに居るはずのエリカの身体を探す。しかし、そこは、すでにもぬけの殻だったが、まだ少し体温の温もりを残していた。
素肌に浴衣だけを羽織り、エリカは離れの縁側で漆黒の闇夜が東から徐々に明けていく様を微睡みながら見つめていた。
"闇が深かければ、深い程、夜明けは近い"。
肉体(からだ)は、満たされても精神(こころ)まだ満たされてはいない……、豪一は彼女の全てを受け入れてくれるが、彼女はまだ、豪一の全てを受け入れられない……、アノ人への思いは、死別して3年たった今でも、心の奥底で燻っていたからだ。
最初のコメントを投稿しよう!