=勝沼= 世界の片隅で…

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いよいよ、出立の日の朝、豪一とエリカは車に荷物を納め、お土産を山の様に持たされて、豪一の家族の見守る中、木更津を目指して出発した。 エリカは窓から身を乗りだし、遠ざかる豪一の家族にいつまでも手を振り続ける。 「少尉殿、いい加減、座りな……、今日は時間があるから沼津まで、足を伸ばしてやるからな」 2人の車は中央自動車道を東京方面に向け走り、大月ジャンクションから富士五湖を眺めつつ、かつて狂信的宗教団体の拠点があった上九一色村を通りすぎて、富士宮市に至った。沼津までもう少しの地点まで来ていた。2人の背後には、駿河湾ごしの富士山がそびえ立っている。 「うわぁ!!、懐かしい風景だわ!!」 市街地にたどり着き目を輝かせて、沼津の街を散策するエリカに連れられ2人は懐かしい場所にやって来ていた。豪一とエリカが初めて出会い、事件の場所となった、岬の端に位置する公園の展望台。 「ありゃ!?、意外に低いな……」 「えっ!?、本当に!?、えー、こんなに低いんだ……」 2人は、顔を見合わせ笑い声を上げる。あの時は必死だったので気が付かなかったが、大人になってから改めて見ると感慨深いものがある。
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