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結局、ナターシャは監察官として、自衛隊の機体を監視しアメリカ本国の国防総省(ペンタゴン)に報告する任務を帯びて残留していた。
渋谷にギガントが出現してから陸上自衛隊は富士教導隊に機甲歩兵の部隊を増設し操縦士の育成を図っていた。同時に五菱重工の横浜工場を拡充して、機体の量産体制を確立し、既にロールアウトした機体は実働部隊に引き渡され習熟訓練が行われていた。
木更津駐屯地の米軍拠点は跡形も無く取り壊され、更地と化していた。その風景を見る豪一の眼差しは寂し気だ。
「感傷に耽っている場合?」
その声に反応した豪一は、声の主、ナターシャの方を向いた。相変わらず白衣に身を包み、研究者らしい雰囲気を振り撒きながら、佇んでいた。
「おぅ、ドブスレンコ大尉、相変わらず麗しいな!」
「お世辞はいいわよ、エリカの事を思い出していたんでしょ……」
「ああ、なんか心の中にぽっかり穴が空いたみてぇだ」
「あらあら、かなりの重症ねえ……」
「大切なモノってのは、失ってから初めて分かるもんだな……」
「あの娘はモノなのね……」
「大尉殿も、いじめるのが好きだな……アイツをモノ扱いしたのは、あんたも同罪だぜ」
豪一は、そう口にすると、東京湾に視線を移し、湾岸越しの都心を見つめ静かにため息を付いていた。
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