=化身=

11/38
前へ
/343ページ
次へ
「豪兄……、あ、あれ……」 夏美の震える声に、彼女の指差す方に豪一は視線の向けた。そこには無残な実家の姿があった。屋根には無数の穴が空き、壁もあちこち崩れている。離れも荒れ果てて、エリカと過ごした面影は最早なかった。 そして、室内に入ると、当たり一面に生々しい血飛沫の跡があり、何かを引きずって行った跡が残されていた。夏美が震える声で囁き瞳を泳がせながら豪一の方を向く。 「豪兄……、これって……」 豪一も、その現場を黙って見守り。重苦しい空気が一体を支配している。そんな夏美に豪一は静かに諭すように答える。 「夏美、まだ諦めるのは、早いぜ!!」 豪一も、まだ両親が死んだとは、考えたくない。そんな希望を打ち消さない為に夏美を励ます為に、可能性を追求するが故に、強気で答えるのだ。 「轟二曹殿!!、物陰に何か動くモノが……」 本家がそう言った瞬間、ソレは3人の方へ向かって襲いかかってきた。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加