=化身=

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豪一は、ソレに89式自動小銃を向け、弾丸を叩き込むが高速弾はソレの体内を貫通し、突撃の勢いを止める事が出来ない。 「ヤバい!!、本家、夏美を頼んだぞ!!」 そう言いながら転がった豪一は、床下にあるチェーンソーを手にすると、発動させてソレの前に立ちはだかる。 「映画だったら悪役の武器だけどな、こっちとら分が悪いんでな、アドバンテージが必要だろ!!」 そう言い、豪一はチェーンソーを正眼の構えでソレ、つまりゴブリンに向け対峙する。豪一の鬼気迫る迫力に、さすがのゴブリンも襲いかかるのを躊躇している。 豪一は知っていた。野生動物を相手に背中を向ける事は敗北を意味する。必ず殺すと言う決意と覚悟を腹に決め、豪一は一歩前に踏み出す。いわゆる、武道で言う摺り足でじわじわとゴブリンの間合いに迫っていく。 豪一のプレッシャーに耐え兼ねたゴブリンの右手の一撃が彼を襲うが、豪一はゴブリンの肘先から摺り上げて切り捨てる。そのまま刃先を返すと脳天から一気に幹竹割りで両断する。 「ごっ、豪兄……」 「と、轟二曹殿……」 夏美と本家の2人は、豪一の凄まじい闘いぶりに戦慄し驚嘆する。まさに鬼神と化したと思える容赦ない攻撃ぶりに背筋が凍る。 両断されたゴブリンの死体の近くにキラリと光るモノを夏美は見つけ、右手でそっと拾う。指輪だった、彼女が見覚えのあるソレは、母、響子のモノだった。 「ご……、豪兄……、これ……」 夏美は、そう言ったきり絶句する。指輪を握りしめ、肩を震わせはじめる。そのまま夏美は豪一の胸に倒れこみ嗚咽を漏らしはじめた。
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