=化身=

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豪一が目にするエリカの機体は更に禍々しさを増していた。腕や肩に取り付けられた長く滑らかな突起部の先端には砲口がのぞいている。口径に比べて砲身がゴツいという事は、砲身の冷却システムを有しているという事だ。通常の火砲ならば、そこまで大袈裟な装置は必要が無い。おのずと、そこから導き出される答えは、豪一の顔つきを変えさせる。 (ま、まさか……、レールガンじゃあねぇよな……) そんな豪一の顔色に気付いたナターシャは、彼の耳元で、回答を吹き込んだ。 「そう、レールガンよ、リニアーカノンとも言うわね」 レールガンを撃つ為には、原子力空母並の電力を必要とする。その電力を何処から発生させるのか?、豪一には疑問だった。その疑問を氷解する様にナターシャが口を開く。 「電気ウナギの仕組みだわ……。装甲の下の筋肉は発電専用、更にその下に駆動用の筋肉の二層式って訳ね」 「はぁ……、なんて化け物をアメリカさんは、造りやがる……」 もう、豪一には、ため息しかなかった。圧倒的な火力を有する異形の化け物に対する方策は限定されるからだ。そんな化け物に乗り込むエリカは、どう感じているのか豪一は知りたいと思っていた。そして、ソレを見透かした様にエリカは口を開いた。 「圧倒的な力を手に入れた者は傲慢になるわ、それは、国家も個人も一緒よ」 「少尉殿、あんたも、その口かい?」 豪一の言葉にエリカは静かに反応する。その表情は、まるで能面の様だ。 「そう、私はこの力を復讐の為に使うわ……」 豪一はエリカの口から、この言葉を聞いて、頭を抱える。コイツ(エリカ)は、呪縛から逃れられない運命にあるのだと……。 「記憶を無くしても、復讐心は忘れてねぇのか……」 豪一は、エリカの肩を掴むと、そのまま抱き寄せた。エリカの身体を力強く抱き締め、しばらくじっとしている。
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