トライアル・1

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向かいのビルの中で交わされるそんな、エリカとナターシャのやり取りも知らず。豪一は機甲歩兵のコクピットで、相手のデータを解析していた。 「立端は、ヤツの方が多少高いな、火力はこちらが圧倒的だが……」 そこまで、豪一は独り呟くとモニターに映り込む機体に違和感を覚えていた、機械化された動きでなく、生物的な滑らかな動き、そう例えるなら爬虫類、恐竜が今、生きていればそんな感じだろと思えた。 「まぁ、生き物だろが、機械だろが、やったもん勝ちだしな、ケンカは先手必勝よぉ!!」 豪一はヘルメットの視点自動追尾制御付きのバイザーを下ろし、エリカの機体に視線を合わせ照準を定めていく。 連続する電子機器からの音が忙しなくコクピット内を占領する。やがて、鋭い決定音とコンピューターの人工音声が目標をロックオンした事を告げる。 豪一は、ためらう事なく、トリガー引き落とした。 「南無サン!!」 豪一がお経の一節を口にすると同時に彼の機体は自らの発射する、対戦車ミサイルの爆煙に包まれていた。 自動追尾のミサイル達は、エリカの機体目掛け殺到していく、逃げるどころか、静止して全弾を持っている様子は異常だった。 「あぁん!?、なぜ、逃げない、直撃だぞ!!」 驚く、豪一の視線の先で、エリカの機体は爆発の中に姿を埋もれさせてしまった。唖然として、豪一は機甲歩兵を停止させ様子を伺っていた。 「あちゃー、殺っちゃったぜ、イイ女だったのによ……、一発、ヤっときゃ、良かっぜぇ」 「豪一、注意しろ、奴っこさん、まだ生きてるみたいだ……」 ヘルメットのインカムから豊田整備長の冷静沈着な声が耳に流れ込んでくる。
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