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突然、豪一に抱きすくめられ、エリカは目を白黒させて身体を預けていたが、やがて意を決した様に豪一を突き離したのだった。
「何のつもりか、知りませんが、やめて下さい」
仮にとはいえ、かつて肌を許しあった仲であるエリカの口から出た言葉は、豪一を傷つけるには、十分過ぎた。彼の心をミキサーに掛ける様にズタズタにしていく。
「そうか……、すまんな……」
豪一は、そう言うとエリカに悲しげな眼差しを向け、瞳を潤ませた。そんな彼の行動をエリカは理解出来ず首を傾げる。そして、ナターシャは、そんな2人の姿を目の当たりにして、その面持ちに苦渋を浮かべていた。
(はぁ……、どれだけ罪深いのよ、この娘(こ)は……)
軟らかな朝の陽射しの前に闇夜は、かき消されて行く。しかし、3人の心は対照的に暗い闇に覆われていた。
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