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「ぐぅ、何て荒業を使いやがる!!」
エリカの機体はもちろん、その強靭な回復力で無傷だ、豪一の機体もリアクティブアーマー、日本式に言うところの爆発反応装甲で守られて致命的な損傷は避けられていた。この装甲は、成形炸薬弾など高エネルギー弾のジェット噴流を装甲上の爆薬の爆発エネルギーで相殺する事で本体の安全を確保していた。
しかし、至近距離からの爆発は豪一の機体に深刻なダメージを残していた。コクピット内部は赤いアラートのオンパレードだった。
「おーい、さくら!!、機体の状況を詳しく教えてくれ!!」
「轟先輩、致命的な損傷はありませんけど……」
桃園二等陸士が、言いよどむのを、豪一は聞きのがさず、更に突っ込んで問いただす。
「どうした!?、はっきりしねぇか!!」
「燃料切れてます……」
「なぁー、調子良くホバリングをやり過ぎかぁ……、やべぇじゃあねぇか!!」
「内蔵電源で暫く動けますけど、その機体相手にフル稼働したら30分位が限度です!」
「おぅ!!、それだけありゃ上等だ!!、きっちりカタを付けてやる!!」
だが、その言葉とは裏腹にエリカの機体は猛然と豪一の機体に襲いかかってくる。訓練では、散々エリカを手こずらせ苦しめた豪一だったが、今のエリカはまったく違う、まるで容赦がないパワー全開のやり方で豪一を圧倒していく。
「ヤバい、ヤバ過ぎる!!、おい!!、少尉殿!!、手加減しやがれ!!」
「何を寝惚けた事を言ってるの?、コレは実戦よ……」
豪一のヘルメットのインカムから聞こえるエリカの声は、おそろしく、抑揚の無い乾いた声だ。何かに取りつかれていると感じる、そんな様子だ。
そして、エリカの機体は再び、その恐るべき本能を剥き出しにしてきた。巨大な口を生々しく押し開き、豪一の機体にかじりついた。鋭い牙で装甲を引きちぎり貪り喰う。
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