=化身=

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「そう、ア・ナ・タなのよ……、アノ娘の心の隙間に上手く入り込んだもんだわ」 そう言うとナターシャは腕組みをして、モニター越しに豪一を軽く睨み付け、鼻を鳴らした。 「まったく、好き勝手にしやがって、愚痴りてぇのは、こっちだぜ!!」 豪一としては、上手くやった訳ではないが、そういう風に取られている事は心外だった。確かに女には甘い、それは認める。しかし、人の弱味に漬け込んで立場を利用して物事を有利に進める様な真似は、彼、豪一が最も嫌うやり方だった。 「愚痴ってる場合じゃないわ!!、エリカに殺されるわよ!!」 ナターシャの慌てる叫びが豪一の機体のコクピット内部に響いた。 「ふっ、もう遅いな……」 エリカの機体は豪一の機体の装甲を食い破り、コクピットを剥き出しにしたのだった。 「み・つ・け・た……」 エリカはコクピットで子供が好物を見つけた様な無邪気な言葉で、しかし恐ろしく不気味な笑みで口元を歪ませ囁く。
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