=化身=

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「こいつは、ひでえやられ様だぜ……」 豊田整備長の顔付きが渋い表情を浮かべ歪む。もう、豪一達の部隊に機体の予備は残されていなかった。完全に行き詰まった状態だった。しかし、ナターシャはある提案を出してきたのだ。 「横浜港の米軍バックヤードにエリカの機体が残っているわ!!」 ナターシャの言う機体は、一番最初の時にエリカが操やつり、豪一を救った機体である。 「アノ機体か!!、大尉殿」 豪一の表情が明るさを取り戻し、一同に安心感を与えていた。だがナターシャだけは、表情が冴えない。当たり前だった、ソノ機体に乗るという事は、エリカと同じようになる事を覚悟しなければならない。 「轟二曹、アナタにその覚悟はあるかしら?」 ナターシャの青い瞳が鋭くそして憂いを帯びて豪一の目を探るように見据える。本来なら、是が非でも彼を乗せて実験を再開し、結果を残したいはずだが、お腹の子供の父である豪一に死地に赴けとは言える筈もなかった。 そんなナターシャの心情を知ってか知らずか分からないが豪一は自らが責任をとるつもりでエリカと対峙する事を選んだのだ。 「少尉殿(アイツ)を止めるのは、オレの役目だ……、いや、絶対に止めてやる」 エリカの機体が姿を消した地点に発生したマンホールは瞬時に消滅していた、普通だと消滅に1ヶ月近く掛かる、しかもソノ状態は、ゲル結界で空間の亀裂を埋めた上での条件だ。 異世界からきた生物を元にしているだけに、不測の事態が起こり過ぎ、米軍の対応力を持ってしても限界に近い状況が産み出されていた。
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