=堕天の島=

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豪一達が向かっている、南硫黄島は、小笠原諸島の火山列島の最南端に位置する。北緯24度13.7分、東経141度27.7分、面積は3.67平方キロメートル、周囲約7.5キロメートルの皇居程の広さの無人島だ。周囲は高さ100から200メートル余りの海食崖にかこまれたピラミッド状の火山島でもある 最高標高は916メートルもあり、伊豆諸島、小笠原諸島を含めて最高峰である。1975年に、島全体が南硫黄島原生自然環境保全地域の指定を受けた事により、国定公園区域から除外されている。 そんな機密性の高い場所へ今回は3000人近い人間がやってきていた。フネは母島の沖を抜け、硫黄島列島の海域に入っていた。強襲揚陸艦2隻、護衛艦2隻という艦隊の規模は陸上自衛隊の一小隊の護衛にしては、あまりにも大袈裟過ぎる。 事実、彼らの西方洋上には、アメリカ太平洋艦隊の原子力空母を中心とする空母打撃群と揚陸部隊を擁する遠征打撃群の艦艇が異例ともいえる規模で控えていた。そこに今回の作戦の異常さが現れていた。 豪一は夕食後、植村艦長の居室を訪ねた。ノックの後、低いが良く通る声が入室を促す。ドアを開け中に入ると植村はTシャツにステテコ姿でくつろいでいる。 「直さん……、少しくつろぎ過ぎでは、ないですか?」 豪一の苦言に植村は笑いながら答える。確かに緊張感に欠ける姿である事は間違いない。 「そう神経質になるなよ、今から力んでたら、本番で使い物にならんぞ」
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