=堕天の島=

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「それにな豪一、艦長は、やめろ。直さんでいい、プライベートでは、階級は無しだ」 植村艦長に言われるように、彼は仕事中の馴れ合いを嫌う性格だ、エリカを少尉殿と言い、ナターシャを大尉殿と言う様に極めて厳格に私生活と仕事をたて分けている。施設隊員として、作業に従事する時は実に柔軟な思考と発想で業務を進めて行く彼だが、人間関係に、おいては本来の臆病な性格が出るのか慎重に歩み寄る姿勢だ。 「はぁ……、すみません、少々、気持ちに余裕がなくて……」 「みたいだな、お前さんの顔付きが別人みたいに、変わってたから、最初は分からなかったよ……」 植村艦長は、作り直した水割りのグラスを指先で持ちゆっくりと手首を回しながら、思い出す様に語った。 「あの時は、ずいぶん助けてもらいましたからね……」 アフリカでのPKO活動をする為、豪一達の部隊は輸送艦おおすみに乗船し、日本を出発していた。施設大隊としての仕事は予想以上に多く、ギガントに破壊されたインフラの復旧が最大の任務であった。 「大体、お前さんは考え過ぎるぞ、もっとシンプルに捉えた方が楽になるぞ……」
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