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南硫黄島へ上陸するために必要な装備がLCACと呼ばれるエアークッション艇だ。一般的には、ホバークラフトと言った方が分かりやすいだろう。
南硫黄島は周囲は、ほぼ断崖絶壁であり砂浜はなくゴロタ石の浜がほんの少ししかない。しかも平均斜度45度の急斜面は通常兵器の運用を困難にしていた。
「このクソ狭いゴロタ石浜に、それだけの物資を揚陸するのは厄介だな……」
植村艦長は、副長の説明に苦渋な顔つきでブリーフィングルームの全員を見回す。その日の午後から強襲揚陸艦いなばのブリーフィングルームで作戦当事者らの打ち合わせが始まっていた。
「揚陸してセッティングしたら人員は直ぐに撤収させください。なるべく短時間で終わらせるのが作戦の主眼です」
ナターシャこと、ドブスレンコ大尉が作戦の要点を語り、各部門の責任者にタイムスケジュールと揚陸する物品の一覧表が手元のタブレットと室内の大型モニターに映し出され羅列されている。
「ドブスレンコ大尉、アメリカ側の動きは分かっているのかい?」
植村艦長は、ナターシャに米軍の様子を尋ねるが、彼女はあっさりとわからないと言葉を返す。本当に知らないのか、嘘をついているのか、ナターシャの態度からは伺い知れない。
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