=堕天の島=

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そのシルエットは、やがてはっきりとした輪郭を表した。背後に多数のギガント達を引き連れ、まがまがしいまでの姿は更に進化して見る者に嫌悪感を与えるには十分過ぎた。 「早速、お出ましかい、見えてるんだろ、少尉殿!!」 豪一は50式の上体をエリカの機体に向けスピーカー越しに語り掛けた。エリカの機体が動きを止めて、背中の装甲が静かにスライドし中からエリカが姿を現す。 スラリとした肢体にピッタリと張り付いたパイロットスーツ越しに抜群のプロポーションが見て取れる、しかし表情は無く、その瞳は冷たい光をたたえていた。薄い唇がゆっくりと動き、豪一に対して語り掛けてくる。 「ようこそ堕天の島へ、歓迎するわ……」 「確かに大歓迎みたいだな、ギガントどもをどうやって、手なずけたんだ?」 「手なずけるなんて下品な事はしないわ、女王は崇め奉られるモノなのよ……」 「ほぉー、崇められるとは、いつから化け物どもの女神様になっちまったんだ……、少尉殿!!」 そうインカムに吐き捨てる様に言うと、コックピットのハッチを開けエリカに向けて拳銃を構えた。沈黙の時が流れる、先に口を開いたのはエリカだった。 「私を殺す気なら、しっかり狙いなさい、拳銃が震えているわよ」 エリカの言うとおり、豪一の銃口は小刻みに震えている、千載一遇のチャンスなのは確かだった、今なら確実に彼女を殺せる……、しかし彼に引き金を絞る力が湧いてこない。 「本当に臆病者ね……、情に流されて決断出来ないなんて……」 エリカは無表情だった面持ちに深い失望感を現し、その冷たい瞳を更に細めた。
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