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『先輩、ずいぶん酷い言われ方ですね……』
「なんだよ、盗み聞きしてやがったのか!?」
「だって、通信回線全開ですよ!!」
「あっ!?、マジか……」
機甲歩兵のコクピットで豪一は顔を歪ませる。迂闊だった。多分、近海にいる連中には状況が筒抜けだろう、下手をすれば米軍を始めとする各国の軍事介入は確実だ。
「さくら、とりあえず陣地を築く、まともにやり合っても、勝てねぇからな」
そう言うと、豪一は機体の腰部分に備え付けられたウインチを引き出し、勢い良く重りを付けたワイヤーを回し始めた。風を切る鋭い音が響き渡る。
絶妙なタイミングで放たれた重りの付いたワイヤーは放物線を描いて山腹の岩の割れ目に食い込む。豪一は50式の腕のマニュピレーターを巧みに操り山腹をよじ登り始めた。
「まさか、コイツでクライミングの真似事をする事になるとはな……」
機体の腰部のウインチがワイヤーを巻き取っていく。やがて岩肌に50式の手を掛けて一気に岩の上に機体を引き上げた。
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