=堕天の島=

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「禁忌の方舟!?、どういう事だ、大尉殿?」 「そのクレーターの中心部がソレよ……」 ドブスレンコ大尉こと、ナターシャがモニター上の白銀の物体を指先で差し示し言う。豪一の機体のモニターにも映し出された"ソレ"は緑色の森の中で異様な輝きを放っていた。 「それじゃ!、ちょっくら行ってくるわ!!」 豪一は、そう言い残して50式の脚を踏み出し森の中へ分け入って行く。密林はジュラ紀や白亜紀の如く、シダに類似した植物が生えている。 「でっけえワラビみてえだな、一本で十分食いごたえがありそうだぜ」 豪一の言葉に、オペレーションルームのさくらは右手で口元を押さえて、笑いを噛み殺している。 この非常時に呑気にデカイワラビなどと、のたまう緊張感のなさが彼らしい。もっとも、ソレは彼自身の不安感に対する反応でもあった。何気ない会話をする事で心の平静を保とうとしていたのだ。 「かなり、深いなぁ……、燃料が持つか?」 やがて、豪一はソレの真下にたどり着いた。思った以上にデカイ!!、見上げる視線いっぱいに広がる光景はひたすらに輝く、白銀の壁だった。 「さて、どっから入るかな……」 豪一はコックピットの中で腕組みをして頭を傾げる。その間、機体のカメラとセンサーはソレの表面上を探査していた。
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