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そこは、見知った天井だった……、豪一が目覚めた先は、駐屯地内の医務室。もっとも、彼はしばらく自分がなぜ、ここにいるのかわからなかったが。
頭に包帯を巻かれベッドに横たわる己の姿は、情けないの一言だった。何か廊下を歩いてくる気配が感じられた後、入口の扉が勢いよく開け放たれた。
「あー、いたいた、情けない姿になっちゃって」
部屋に入って来たのは、エリカだった。アメリカ陸軍の女性制服を身に纏い、凛とした雰囲気を醸し出している。後ろには、あの金髪美女ナターシャが白衣姿で静かに控えている。
「まったく、人をこんなにしといて、その言いいぐさはねぇだろ!!」
豪一の怒り声に、エリカは頭を下げるどころか、豪一の対処に文句を付ける始末だった。口喧嘩をする2人の間に入ったのは、ナターシャだった。
「私達も、不用意でした、申し訳ございません」
そう言うと彼女は手にした、お見舞いの手土産を豪一に手渡し、頭を深々と下げ謝罪した。そして怪訝そうな顔でナターシャを見るエリカにも謝罪するように促したのだった。
「何で!?、私達があやまらなければならないの!!、ヘマをしたのは、コイツよ!!」
あくまでも、自分に非がないと謝罪をする気のないエリカにナターシャの平手打ちが飛ぶ。エリカはバランスを崩して床に尻餅をつく。
口元から血を流し、エリカはナターシャを睨み付ける、2人の鋭い視線が火花を散らしていた。そんな殺伐とした空気に耐えきれない豪一はエリカとナターシャに怒りの矛先を納める様にお願いする。
探る様に神妙な面持ちで、2人の表情を伺う豪一の滑稽な姿にナターシャは、可笑しくなり笑いだす。
エリカも肩から力を抜いて感染したかの様に釣られて笑いだした。
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