=堕天の島=

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エリカの姿を目にした豪一は、50式のコックピットのハッチを開け機外へ飛び出した。その手には89式自動小銃が握られている。豪一はためらう事なく、ソレをエリカに向けトリガーを引いた。5・56㎜高速弾が彼女を目掛けて集中する。 「いいわね……、有無をいわせない先制攻撃ってわけね」 豪一の奇襲に対して、慌てる事なく対応するのは、圧倒的な力を有している証拠だろう。事実、豪一の手にした小銃から放たれたライフル弾はエリカに届く前に空間の上で弧円を描き跳弾と化していた。何らかの力が働いている証拠だろう。 「だから、言ったでしょ、私は殺せないと……」 「とうとう、身体の方も本物の化け物になっちまったな……」 豪一は、薄気味悪い笑みを浮かべるエリカに近づきながら、そう言って手榴弾を彼女の足元に転がした。 エリカの足元で炸裂した手榴弾で彼女の身体は引き裂かれ爆散したかに見えたが……、ズタズタになってなお、その口元に不気味な笑みを浮かべている。 「無駄よ、無駄……、いくら殺っても無駄よ」 「ギガントより始末が悪いな……」 もはや、豪一に打つ手はなかった。彼は軽くため息を付くと、その場に座り込みエリカに問い掛けた。 「ここに来たついでだ、何で化け物どもの頭になったか説明してくれ、少尉殿!!」 豪一としては、ここで殺されるにしても、納得のいかない事が多すぎて未練が残る、せめてスッキリとさせてから逝きたいものだと思っていたからだ。 そんな、豪一の気持ちを察したどうかは判らないが、エリカは引き裂かれた身体を再生すると静かに、豪一に語り始めたのだった。
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