=堕天の島=

41/44
前へ
/343ページ
次へ
「まあ、積年の恨みってヤツは容易に晴らせないのは分かるぜ、だからといって人類(ヒト)を滅ぼすってのは乱暴過ぎねぇか?」 豪一はアルケミアを指差し彼女のやり方に異を唱えた。少しでも人類にとって生き残るチャンスが増えれば、それに越した事はない。 「どんなに言葉を弄しても、私の考えは変わらないわよ」 全く、頑固な女だと豪一は思う。外観がエリカだけに、その血筋が色濃く反映されているのだろと彼は思っていた。これ以上の交渉は無駄な事を悟らざるを得ない。 「やっぱり、あんたとは力技で勝負しなきゃならないな……」 豪一は低い声で呟いた。絶望感と焦燥感が入り交じった重い響きがそこには、あった。 「いずれにせよ、私を倒さなければ、前には進めないわよ、覚悟する事ね」 この言葉に追い詰められたのは、豪一の方だった。人類の未来の為には、エリカを殺さざるを得なくなったからだ。"命は地球より重い"よく言われる言葉だが、人類はその尊い命を有史以来を殺しまくってきた。明らかに人命軽視と言わざるを得なかった。 「アイツの命と人類の存亡を天秤に掛けろってのか……」 「軍人としては、命令の遂行は最優先よね。でも、貴方個人としては、どうなのかしら?」 余りにも、いやらしい問いかけだった。豪一の心中を見透かした言い草はアルケミアの口から出たモノだが、エリカの容姿から語られると豪一の心は動揺した。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加