修羅の群れ

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平和過ぎる渚が続く北太平洋。それに反して南硫黄島沖に浮かぶ強襲揚陸輸送艦いなばの艦内は慌ただしかった。 「轟二曹からの連絡はまだなの!!」 ナターシャこと、ドブスレンコ大尉はオペレーションルームで声を荒げて、豪一からの連絡を待ちわびていた。彼からの連絡が途絶して、はや2時間が過ぎ去ろとしていた。南硫黄島の中で何が起こっているのかドブスレンコ大尉を始めとする"いなば"のクルー達には皆目見当が付かない。 「ドブスレンコ大尉!!、轟二曹から入電です!!」 桃園二等陸士の明るい声がオペレーションルームに響き渡る。室内の空気が張り詰めていた緊張感から解放された、どよめきが拡がる。 「大尉、すまねぇ……、アイツとの交渉は決裂だ……、これからガチンコ勝負に入る」 豪一からの報告を受けて、ナターシャは顔を伏せた。運命に翻弄される親友の過酷な状況に何もしてやれない己の無力さを呪う。やがて、ゆっくりと頭を上げると瞳に決意の光を宿らせて、豪一に作戦指示を出したのだった。 「轟二曹、では手筈通り、オペレーション・Gの発動を許可します」 「本当に、いいのか?、大尉殿……」 機甲歩兵のコックピットに座る豪一がモニター画面内越しにナターシャの決意を確かめる様に問いかけた。
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