修羅の群れ

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アルケミアの方舟を離れた豪一は来た道を引き返していた。もちろん道なき道をGPSを頼りに進んでいるのだが。 「ん、もう昼過ぎかよ、腹も減ったし、ここらで飯でもするか……」 機甲歩兵の歩みを止めて、分厚い装甲板のハッチを開け外に出ると、豪一は出掛けに渡された弁当箱を引っ提げ地上に降り立った。 「ありがたいねぇー、こういうちょっとした気遣いが嬉しいねぇ」 戦場の真ん中で弁当を広げるという暴挙にでた豪一は落ち着きをはらい堂にいったものだ。最早、誰に気兼ねする事なく弁当に箸をいれた。 「ほおーっ、こいつは極上の秋田小町だな。いい具合に炊き上げてある」 まず、米を口にして噛みしめる。農家の出身だけに素材の良し悪しにはうるさい。弁当の中身は極めてオーソドックスな内容だった。 白米に梅干しが一粒埋め込んである。惣菜はタコの形のウインナーや卵焼きに焼きサバ、鷄の唐揚げ、インゲン豆のごま和え、茄子と甘長唐辛子の煮付け、プチトマトが彩りを添えている。 「あのコック長、厳つい顔して芸が細かいな……」 出掛けに弁当を渡してくれた厨房長の岩鬼(いわき)はスキンヘッドの一重瞼にチョビヒゲの厳つい顔付きで豪一に近づくと黙って弁当を手渡したのだった。
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