修羅の群れ

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自らの異常に気付いた者はもはや"その状態"には戻れない。理性が邪魔をして野性の状態に持って行く事を身体と心が拒否をする。 エリカはアルケミスに助けを乞うた。豪一に対抗するにはアルケミスがエリカの理性を弾いて圧倒的な力を引き出すしか方法がなかったからだ。 『エリカ、人間に戻れなくなるわよ……』 アルケミスの言葉に躊躇いが感じられる。この世界でヨリシロである彼女を失いたくない気持ちが声の調子に表れていたからだ。 「神様でも、躊躇するんだ……」 『私は神様ではないわ、貴女達より少しだけ進んだ科学力(ちから)を持っているに過ぎない者よ……』 アルケミスは謙遜するが、今の人類からすると"ちょっと"どころか圧倒的な格差が存在している。 「理性のタガを外して、野性を解放するのは、そんなに危険かしら!?」 エリカは自らのかつての行動を知ってか知らずか、あっさりと疑問を呈するのだった。 「貴女の力を解放すれば、五分五分どころか圧勝するけど……」 「アルケミス、やってちょうだい……」 エリカの言葉にアルケミスは目だけ動かし瞳を細めた。エリカが勝つ為に手段を選ばないつもりな事はイヤ程伝わってくる。アルケミスは、エリカのリミッターを解放した。
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