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液体化した緩衝材が装甲の裂け目から徐々に漏れ始めていた。赤い液体がニードルの表面を伝わり地面に落ちていく。その様子を見て豪一は自分がナニをしたか悟った。
しかし、エリカの機体は彼女が死ぬ事を許さない。彼女の意思とは別に機体自身の防衛機能が発動してエリカの肉体の再生を始めた。そして機体は自らの体に突き立てられたニードルを引き抜き始めた。
「なっ!?、まだ生きてやがるのか!?」
豪一は眼前で繰り広げられるエリカの機体の持つ本能的な生存への執着心に恐怖を覚えていた。事態を終息させるべく彼は動き始めたのだが……。
「コロシテ、アゲル……」
エリカはそう呟き、無表情だった顔に不気味な笑みを浮かべた。機体の恐るべき再生能力は自らの修復だけでなく、操縦士たるエリカをも完璧に復活させていたのだ。
「まだまだ、終わってねぇ!!」
豪一は、機体の腰にマウントされた高周波ナイフを素早く抜き出し構えた。その姿は原始時代に、圧倒的な力を持つ野生動物を前にして黒曜石の槍を手に立ち向かう人類の姿そのものだった。
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