修羅の群れ

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機体のハッチを開け放ち、エリカは地面に降り立った。くるぶしまで溜まった2号機の体液の中に浮かぶ半身になった豪一に駆け寄った彼女は力一杯抱き上げた。 「よぅ……、少尉殿、あんたの勝ちだな……」 「死に掛けの人間が、なに余裕ぶってるのよ!!」 エリカは豪一の体をきつく抱き締める。焦点の定まらない豪一が息を吐き出す様にニヤリと笑う。 「あーこりゃヤバいな目が見えねぇ……、先に地獄に逝ってくるぜぇ……」 そう言って、豪一はガクリと首を折った。エリカはしばらく沈黙していた。豪一が死んだ事を受け入れられない。 「ひ……1人にしないでよ……、なんで先に逝ってしまうのよ!!」 豪一を抱いて号泣していたエリカはやがて視線を自らの機体に向けた。真っ赤に泣き腫らした瞳に鋭く強い決意の光を浮かべると静かに立ち上がった。 「この人を死なせは、しない……」 エリカは素早く自らの機体に掛け上がるとハッチの横にあるインジェクションレバーを思い切り引いた。 コックピットを満たしている例の緩衝材は液体化していく。エリカはその様子を見て頷く。
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