修羅の群れ

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人間の欲望を剥き出しにした様な怒涛の攻勢が掛けられる。米軍は持てる戦力の全てを叩きつける大物量作戦を展開し始めた。 肉体的に強靭なギガント達だが火力の数で劣る彼らは次第に劣勢に立たされていく。戦いの分水嶺は決したかに見えた。 「艦長、南硫黄島の周辺空域が高エネルギー反応を示していますが……」 「高エネルギー反応!?」 艦長のネルソン大佐は訝しげな表情で測量長を睨み、続きを報告する様に顎をしゃくり促す。 「マンホール発生時の前兆に類似しております……」 測量長の言葉に反応したのは、司令のベイツ中将だった。苦渋をその強面に浮かべる。 「少し早まったか……」 「ベイツ司令、今からの撤収は戦線の混乱を招きますが……」 ネルソン艦長の言葉にベイツ中将は沈黙で答える。今、彼の頭脳では戦略と戦術の調合をはかる計算がAI並みの速さで駆け巡っていた。 戦況は後、一押しで決定的勝利を得られる場面まで来ていた。しかし、今この瞬間に敵戦力を投入されれば、戦線は崩壊して米軍の敗北は必至なる。 今後の政治家としての活躍を約束されている彼としては失敗は避けたかった。だが、人類の未来を考えるとギガントの親玉である、アルケミスを徹底的に叩いておく必要があった。
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