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医務室に一人残された豪一は、天井を見つめ独りごちする。
「何か、どえらいコトに首を突っ込んじまったみてぇだな……」
豪一は、エリカの瞳に宿る暗い焔に気が付いていた、軽口を叩き、おどけた様子で振る舞う彼女の所作の端々から心の底に抑圧された怒りの情念が滲みでるのだ。
「俺のコトをイカれてると言ってたが、アイツのイカれ具合もかなりのもんだがな……」
窓側にゴロリと寝返りをうった豪一は静かに目を閉じたのだが……、次の瞬間、再び入口の扉が開かれる。
「ようー、豪一、生きてるかぁー?」
大声で、がなり立てる髭面の小肥り中年男性、整備士のツナギを着ているのは、豊田整備長だ。五菱重工の面々を引き連れてきたらしい。
「先輩ーっ、大丈夫ですか?、あっ、頭を打ったんですね」
データ解析とオペレーター担当の桃園さくらが心配気に豪一の側にやってくる。
「おう、さくら、なんだ?、その染みったれた顔は」
「だって、先輩、死んじゃうかと思ってたもん!!」
さくらの涙うるうるの瞳に豪一は、この新人隊員に余計な心配をさせてしまった事を申し訳なく思っていた。
確かに、米軍の医療チームの素早い治療対応で救われたのは事実だった。
特に、医務室を出て自分たちの拠点に帰る途中で見た機体の損傷具合からすると、死んでいてもおかしくないと思えたからだ。
そして、拠点に帰り着いた彼らの前に現れたのは、アノ男だった。
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