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やおら、ナターシャは立ち止まり。その身をクルリと翻すと、豪一にIDカードを差し出す。
「はい、これ、研究室に入る為の魔法の札よ、首から掛けて頂戴ね。ちなみに、忘れたら対人レーザーの餌食だから覚えておいてね」
恐ろしいことを事も無げにあっさりと言うナターシャの神経が分からない。
多分、頭のネジが何本か抜けているのだろと豪一は思うことにした。
「まったく、アメリカ軍は、どえらい仕掛けを作りやがるな、オレ達のボロ施設とは、桁違いだぜ……」
豪一は頭をバリバリと掻き立て、ぶつぶつと独り言を呟きながら、ナターシャの後を追った。
やがて、二台のシュミレーターが鎮座する部屋へと、2人はたどり着いた。一台は稼働中らしく、左右上下に緩やかに揺れている。
ナターシャと豪一がいるのはシュミレーター室の二階、鉄の手すりが付いた回廊部分だ。上から見下ろしながら、ナターシャは豪一に語り掛ける。
「ずいぶん強引だと、思ってるでしょ?、私達の都合ばかり押し付けて、ズルいって……」
豪一もシュミレーターを見ながら、ゆっくりと答える。
「まあな、あんたらの母国は、いっつもそうだろー、"オレ達が一番だ"って、ごり押しすんのは、十八番(おはこ)だろ?」
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