トライアル、2

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豪一は、右側のシュミレーターにその身を納めていた。兵器然としたこの空間は彼にとっては使い馴れた場所であり心が落ち着く所でもあった。 エリカの機体に設置された、シンプル過ぎる殺風景なコクピットは正直、仕事として使うには囲まれ感が無く苦手だった。 『ミスター轟、準備はいいかしら?』 豪一のヘルメット内蔵スピーカーからナターシャの良く通る声が耳元に心地良く響いた。 『おぅ、いつでもいいぜ』 『こちらも、OKよ!!』 豪一とエリカの声が同時に調整室のナターシャに返ってくる。今日のシュミレート訓練は対戦形式の模擬戦だ。 調整室内のモニターには、各シュミレーター内部の様子が映して出されている。そのモニターを見つめながらナターシャは2人の訓練に入る前の口喧嘩を思いだして微笑んでいた。 「まったく、2人共、不器用なんだから……」 そう呟く様に小声で囁いていた。そんなナターシャにオペレーターの1人が慌て気味に異常を告げる。 「轟二曹の感応値が異常です!、このままだと、オーバーロードでダンパーが作動しますが」 「構わないわ、続けて!、エリカ、聞こえてる?、彼逝っちゃてるみたいだからあんたも弾けちゃいなさい!」 ナターシャの嬉しそうな声を上げる姿が、エリカの目前に全天モニタースクリーン一杯に映し出される。
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