トライアル、2

22/22

18人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
シュミレーターでの訓練が終了し、調整室内に集合した2人は一言も交わす事なく互いに相手と反対の方を向いて立っていた。 「御2人さん、お疲れ様。今日はこれで終了よ」 にこやかに、訓練終了を告げるナターシャに豪一は、目が座った無表情な顔つきで口を開いた。 「アンタの思い通りには、させねぇよ、ドブスレンコ大尉、俺はアンタのモルモットじゃねぇからな」 ナターシャは目を見開き、息を止める程、驚きの表情をその美しい顔に浮かべていた。 「な、なんの事かしら?」 「とぼけなくても、いいぜ俺には、"見える"んだよ悪意ってヤツがな……」 豪一の思わぬ発言に、ナターシャは動揺を隠しきれず、エリカは驚きで目を見張る。2人の困惑が表情に現れる。 「ドブスレンコ大尉、アンタは真っ黒だよ、恐ろしくな、名前通りの毒々しい性根の持ち主だよ……」 「豪一、ずいぶん、失礼な物言いじゃない!!、直ぐに謝りなさいよ!!」 親友に対する辛辣な言葉にエリカは感情を剥き出しにして豪一に詰め寄った。 そんなエリカに対しても、豪一は鋭い視線を走らせ一言、告げた。 「少尉殿、お前さんも一緒だ、青く冷たい炎でその身を焦がしている、復讐の炎でな」 固まる2人に、背中を向ける豪一、だがその肩が少しずつ震えている。 「ププッ、もうダメだ、やっぱ無理だ、俺には出来ねぇ!!」 「はぁ!?」 エリカとナターシャは一気に表情を変え、怪訝そうな顔つきになる。 「私達をはめたわね!!」 「ああ、今まで散々やられてきたお返しだよ、趣意返しってヤツだ」 「あきれた人だわ、わざわざそんなコトする為に演技してたの!?」 エリカとナターシャはあきれ顔で豪一を見ていた。しかし、豪一が口にした感情が見えるというのは本当の話しだった。 彼には、感情が炎の様に目に映るのだ、例えば、悪意は黒く、殺意は青く。 (こんな事を言ったら、コイツらに本当に変態扱いされかねぇからな……) 豪一は、エリカとナターシャに袋叩きにされながらもニヤリと笑みをこぼしていた。
/343ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加