エリカ =復讐の女=

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12歳の時に、サンフランシスコで地震に伴うギガントの出現によって、私は父以外の家族、母と妹を失った。 余りのショックにしばらくは、口も聞けない失語症になり一年ほどかけて回復させていったのは苦しかったよ。 言葉を失っていた間、私を慰めてくれたのは、父の書斎の書物だった。あらゆるジャンルの書物を貪る様に読み漁り、知識や物事の仕組みを子供心に理解していったのもこの頃だった。 この頃の父は忙しい中でも、私に愛情を惜しみなく注いでくれた。父も母や妹を失って辛かった筈だが、それでも、出来る事は何でもしてくれたし、与えてくれた。 そんな、優しい父が一度だけ猛然と反対した事があった。私が陸軍の士官学校に入りたいと言った時の事だ。多分、父は気が付いていたのだろ、私が母や妹の仇を取る為に軍人になろうとしていた事を。 父は必死になって、私に復讐の愚かさを語り、考え直す様に説得してくれたが、その頃の私は復讐心に凝り固まっていて聞く耳を持たなかった。 父は私の決意が堅い事を悟り、それ以上は何も語らなかったが、士官学校に入る為、実家を出る時、悲しげな寂しい色をその瞳に浮かべていた。 今、思えば、娘の私が棘の道を自ら進んで行く事を予感していたのかも知れない。 そんな、父の視線を振り切り、私は新しい世界へ飛び込んでいった。自らを呪縛する運命の鎖を断ち切る為に。
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