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最近、よく見る夢がある。幼い私が誰かに右手首を掴まれている。そこは、崖っぷちで、私の腕を掴んでいるのは、私より少しだけ年上っぽい容姿の少年だ。
私を掴んでいる彼の掌には何か突き刺さり血が流れ落ちて、私のワンピースを濡らしていく。
「絶対にあきらめんなよ!!」
そう言う、少年の顔は赤鬼の様な形相で真っ赤に染まっている、そして、私のワンピースもそれに呼応するかの様に赤く染まっていく。
少年の手から徐々に力が抜けていくのが分かる。私は少年の方に顔をあげて叫んだ。
「もういいから、お兄ちゃん離して……」
その言葉に少年は更に顔を紅潮させて怒鳴った。
「バカ野郎ーっ!!、勝負ってのはな、あきらめたら終わっちまうんだ!!、オレは絶対、あきらめねぇ!!」
しかし、言葉と裏腹に力は抜けていく……。彼の手が離れる瞬間に目が覚める。
「ふうーっ、また……、あの夢だわ……」
私は額にじっとりと汗を浮かべて、ため息を付く。幼少の頃の思い出が今頃になって甦ってくる。
結局、消防団のお兄さんに寸前でピックアップされて助かったのだが、帰ってから母親にきつく叱られたのをよく覚えている。
母の実家の近くに、やはり県外からおばあちゃんの所に来ていた少年が私を助けてくれたのだが、彼は右手に大怪我を負って病院に担ぎ込まれたと後から母に聞かされた事も思い出していた。
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