=渋谷攻防戦=

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陸上自衛隊、木更津駐屯地、ジェネラル・ベビー・インダストーリ・ビル、つまり、エリカ達の拠点の一角で。 「ちょっと、付き合ってよ」 大型連休も終わり、季節は梅雨に入ろうとしていた。5月末の土曜日、シュミレーター室でエリカは豪一にそう言って、話しを切り出した。 「なにを付き合えってんだ少尉殿!?」 「ファザーディよ」 「ファザ……、ってなんだ!?、あっ、父の日かよ!」 豪一はエリカを細目で、値踏みするように視線を走らせた。その視線を受けてエリカは照れくさそうに笑う。 「なによ、何かおかしい?父親に感謝を伝えるプレゼントを選ぶの手伝って欲しいのよ」 「ほうー、いつも強気のエリカ少尉様が直々に依頼とは、尋常ではござらんな」 豪一は、わざと時代掛かった言い回しで答え、エリカの方に顔を向けて問い掛けた。 「それで、何処に行くんだ?」 「シブヤよ!!」 「シブヤって、東京の渋谷か?」 「そう!、その渋谷よ」 エリカは嬉しそうに答えるが、豪一は空を仰いだ、木更津から東京までは、東京湾横断道路、いわゆる、アクアラインを使えば、片道1時間位だが、彼は東京名物渋滞が苦手だった。 「とりあえず準備してくれ、1時間後に出掛ける」 「了解しました。軍曹殿!!、直ちに準備に入らせて頂きます」 「軍曹じゃない、二曹だ、少尉殿!!」 「階級は私の方が上よ、コレは業務命令です!」 「はぁ!?、業務命令だと単なる付き添いだ!!、他人が誤解するような発言は慎んで頂きたいですな少尉殿」 豪一は、そう言うと席を立ち、自分の隊舍に戻っていく。その姿をエリカは見送りながら微笑んでいた。 「何だかんだ言って、ちゃんと付き合ってくれるじゃない……」 1時間後、豪一の車、スバル・レヴォーグの前にエリカはバックプリーツVネックチュニックの上着にデニムパンツの出で立ちで表れた。 豪一はハンチング帽子にポロシャツとベストに綿パンの格好だ。 「どこの、おっさんよ……」 「渋いと言え、ブリティッシュ風だ!!」
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