=渋谷攻防戦=

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東京アクアライン、川崎側は全長9.6キロの海底トンネルになっている。これは、この海上が日本有数の煩雑な航路であるからだ。 このトンネルは横風の影響を受ける事がない為、一部の走り屋には、最速アタックの聖地として秘かに重宝されていた。その事を知っていた豪一は、この場所で一気にカタを付けると尾行に気が付いた時、決めていたのだ。 パーキングエリアのある、海ホタル直下の海底トンネルに飛び込んだ、豪一の車は更に加速する。速度計は200キロを超えて更に上がっていく。 「もうーっ、死ぬ!、死ぬ!、逝っちゃうよ!!」 エリカは泣き声を上げ、涙と鼻水を盛大に垂れ流し、助手席で叫び散らしていた。 「騒ぐな、少尉殿、俺を信用しろ!!」 「出来たら、叫ばないわ!!」 「車より、ヤバいモノに乗ってんだろ、少尉殿」 「それとコレとは別よ!!」 エリカが叫ぶのも仕方ない、自分のコントロール下にない乗り物程、怖いモノはない。彼女の叫びは、自らの意識下にないモノに命を預けざるを得ない恐怖心から来ていた。 彼女の意識が飛ぶ寸前に、車はトンネルから抜け出していた。眩しい光にエリカは目をしかめる。流れる風景が普通に見える速さで目に入ってくる。 (はぁーっ、助かったわ、コイツ、本当にバカ野郎だわ……) エリカはハンドルを握る豪一を忌々し気に睨み付け、心の中でこぼしていた。
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