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2人は食事を終えて、コーヒーを啜りながら無言で景色を眺めていた。そのエリカの顔に緊張が走る。視線の先には、渋谷のスクランブル交差点がある。
「あれは……、まさか!?」
スクランブル交差点の上空の空間が歪み、黒々した空間の裂け目が広がっていく。
「こんな所まで、"奴ら"が……、米軍は何してるの?」
エリカの言葉と表情には、失望と焦りが伺われる。その姿に豪一も視線を交差点の方に向けた。
「ギガントか……」
渋谷の街中に墜ちてきたのは、おぞましい姿をした巨人。いや、人と言うよりも分厚い鱗状の装甲を纏った恐竜と言った方が適切だ。スクランブル交差点にいる人々を貪る様な勢いで片っ端から食らい付いていく。
「うへぇーっ、地獄だぜ、こりゃ……」
豪一が呟くと同時に、店内も騒がしくなる。空間穴、いわゆる、マンホールから続々とギガントが姿を現す。渋谷の街がギガントに埋め尽くされる。
「おい、おい、まさかな、こんな所で出くわすとは」
「何、感心してるの、逃げるわよ」
「こういう時は、あんまり動きまわらねぇ方がいいぞ」
「どうするのよ?、ギガントの餌なんて、ごめんよ!!」
「まぁ、のんびりここで、日が暮れるまで待つさ」
「なに、呑気な事、言ってんのよ!」
「だってよ、武器も無しで、どう戦う?、孫子も言ってるぜ、三十六計逃げるにしかずってな」
豪一のやる気のなさに、エリカは怒りを覚えていた。蹂躙される渋谷の街を見つめるしかない自分達の無力さにも焦燥感を感じていた。
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