=渋谷攻防戦=

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「状況がキツイから、このコトは不問にします」 計算外の出来事によって、唇を奪われてしまったエリカは憤懣やるかたない。その怒りの矛先を向けられるギガントやゴブリンは気の毒としか言い様がない。 不問に伏すとは、言ったものの、明らかに2人の間には温度差があった。 「少尉殿、そんなにぶちまけると、足らなくなりますぞ……」 「うるさいわね!!、分かってるわよ!!」 とても、士官学校をでたとは思えない、激しい感情的な動きを露呈するエリカに豪一は疑問を感じていた。 「少尉殿、些細な事に捕らわれると、大局を見誤りますぞ……」 「ダレが原因か分かってて」 エリカのキツイ視線を一身に受ける豪一は、咄嗟の事とはいえ、彼女にとって大事なモノを奪ってしまったのかもしれないと思っていた。 「あちゃーっ、こりゃ、ひでぇな……」 外側に面した廊下は、喰い散らかされた死体の山が出来ていた。ビルのガラス越しにヘリの機影が見受けられる。 「自衛隊か米軍の機体かしら……、意外と早いわね」 「やっとお出ましかい……、おっとり刀で駆け付けてきやがったか」 米軍の初動は実に素早かった。ドブスレンコ大尉からの連絡が入った時点で、既に各部隊の配置は完了していた。 それは、米軍がオルタネーターの特異点としての能力と影響力について日本政府と比べモノにならない位の情報量と実績を実戦の中で積み上げていたからに他ならないからだ。
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